幕末2008年01月11日 01時48分48秒

司馬遼太郎が,暗殺を扱った比較的短いストーリーを12話集めたもの.司馬遼太郎自身が「暗殺だけは,きらいだ」とあとがきに書いているように,たとえどのような目的だとしても,その手段としての,暗殺という手法は文字通り暗いイメージを伴うし,なによりも許されるべきではない手法である.

それでも,幕末という時代,功名が目的だったとしても,また,たとえ暗殺によって時代が変わらなくとも,時代の空気がエネルギーに満ちていたことは感じられる.たぶん,司馬遼太郎自身が,意図的にそう感じられるように書いている,ということもあるのだろう.さらにその裏に現代の無気力な人々に対する批判もあるのではないだろうか,というのはちょっとうがった見方か.

なんにしても,それぞれの話が司馬遼太郎独特の切り口で書かれており,飽きさせない本であった.さすが,である.

ITSのいまとこれから2007年07月24日 03時41分15秒

先週末,たまたま本屋で平積みになっていた,Motor Fan illustrated VOL.9を買ってみた.Motor Fan別冊ということなのだが,そもそも車関係の雑誌はほとんど買わないので,Motor Fanという雑誌すら知らない…と思って調べてみたら,Motor Fan自体はすでに10年ほど前に休刊しているらしい.

それはともかく,表紙に「ITSの"いま"と"これから"」という特集の文字が見えたのが購入した理由である.で,ぱらぱらっと見てみた範囲では結構いろいろと調べてあり,よく書かれている.

ずーっとめくっていくと,最後の特集記事だけ,著者紹介がついていた.あ,なるほど,この人たちが関係していたのね,という感じである.

眉山2007年06月09日 01時52分20秒

さだまさしが書いた本.なんとなく話題性につられて軽い気持ちで買ってしまった.が,読み始めて後悔.文体は軽いが,軽い気持ちで読む本ではなかった.

話としては,母が余命数ヶ月と宣告された娘の視点を通して,母親のいままでの生き様を発見する,というような話である.この母親が見事なキャラクターであり,映画の予告編(?)で見た宮本信子のイメージにぴったりである.

できるとは思わないが,こういう生き方にはあこがれるものがある.きっと著者にとってもそういう意味を込めた書き方なのであろう.

ハンニバル・ライジング2007年05月27日 01時36分28秒

確か,レッド・ドラゴン,羊たちの沈黙,ハンニバルは読んだ.ということで結構期待して読んだ.読んでいる最中で映画も見てしまった.

翻訳の影響もあるのかもしれないが,美しい言葉で書こうという努力が見て取れる(見て取れる時点で,まだまだ,ということでもある)文章で,非常に血みどろの世界を描いた,という感じ.

美しい言葉にする過程で日本文化とか日本の伝統を入れてみた,という感じか.よく勉強しているなぁ,とは思うが,イメージ先行の感は否めない.

映画は2週間ほど前に見たのだが,不満なのはマダムを演じているのが日本人でないこと.作品としては結構好き,だがもう一度観たいと思うほどでもない.

ストーリー的には本の方がよいと思う.個人的には映画→本という見方をする方がいい作品かな,という気がした.

華麗なる一族2007年04月04日 02時47分07秒

最近話題になったドラマの原作である.まぁドラマになるということで並んでいたのを買って読み始めたわけであるが,実はドラマはまったく見ていない.

ストーリーの構成としては,実は「白い巨塔」とそれほど変わらないような気もするのであるが,要は勧善懲悪ならぬ,勧悪懲善みたいな話である.かなり綿密な取材をベースに練られたストーリーと沢山起こるイベントによって話が進んでいくあたりは,最近の海外ドラマと通じるところがあるのであるが,主人公というか善が勝たないあたりに違いがある.

まぁ悪も悪なりに主人公なのであるが,最終的には悪も滅びるあたりが山崎豊子らしいという感じである.しかし,これをドラマにするのはしんどいだろうなぁ.

そういえば,沢山の登場人物がいるのであるが,それを分かりやすくするためか,名前が特徴的である.鉄鋼(特殊鋼)会社の鉄平,銀行員の銀平に始まり,大多数の登場人物が,名が体を表すようになっている.

「渋滞学」2006年12月29日 02時17分58秒

すっかり「本」カテゴリーを作ったのを忘れていた…わけでもないのだが,まだ2記事目….

で,S氏に勧められて購入した本である.渋滞の特性をいろいろと解きほぐしながら分かりやすく解説してある.というより,セルオートマトンを適用できる現象を渋滞と絡めながら解説している感じ.

著者が気をつけて書いたというだけあって,難しい話が非常に分かりやすく書かれている.普段論文などを書いている技術者が書いているな,というのは随所に感じられるのであるが,それだけに苦労して書いたのであろうな,というのがしのばれる.

で,セルオートマトンを使ったシミュレーションでも作ってみたいな,と思ってしまったのが私の感想.見事に洗脳されてしまっている.

功名が辻2006年01月29日 03時14分07秒

昨年末に見た大河ドラマの予告につられて,正月に1巻を購入して,そのまま読んでしまった.内容は大河ドラマでもさんざん予告されている通りである.ただ,いまのところ,大河ドラマは本の前の話で,かなりドラマっぽく仕立てられているので本と異なっている.個人的には本の設定の方が好きである.

で,主人公の千代は小憎らしいほどに頭の切れる女性で,悪くいえば夫を操って,一国の国主にまでしてしまう,という話であるが,それだけで国主になれるわけもなく,それを補うだけの運の強さとかを夫も持っているわけである.この「運の強さ」というところが問題で,結局ここだけはどうにもならんところだったりする.

司馬作品にしては珍しく文体が軽く読みやすいなと思っていたのだが,主人公が女性だからかもしれない.

困ったのは,読んでいる時のイメージである.普通に読んでいるときは,特に頭の中にイメージを持たないのであるが,どうしても千代のシーンでは仲間由紀恵が出てきてしまうのである.読み始めた時点では,予告しか見ていなかったにも関わらず.

それにつられて,秀吉には竹中直人が,家康には津川雅彦(独眼竜政宗のときのイメージらしい),ねねにはなんと佐久間良子(おんな太閤記らしい)とむちゃくちゃなイメージになってしまった.まぁ,それはそれで楽しいのであるが.